一般的に個人投資家は多くは勉強熱心である。書店に並ぶ株本や、ん万円もするDVD、各種投資セミナーや証券会社主催のなんとか講座、何か自分のプラスになると思うと学ぶ努力を怠らない
しかも、結構バカにならないお金を出して情報を収集する。

私などその典型であったのだが、すべて役に立たなかったとまでは言わないまでも、ほとんど役に立たなかった。
何故かと考えてみると、結局評論家レベルの人が投資がなんたるかを語っている場合が多い。
何とか銀行の社長になって悪いことをして逮捕された木村某氏など典型的な例であろう。
木村某氏は長期投資がうんぬんという本を出していたが、実践家が書いた本ではなく、所詮評論家が売名行為を目的として書かれた内容の本である。
さらに先日ラジオ日経の番組にK浜某先生が出演されていた。
その中で実践家であるワタナベくん突っ込まれて、どぎまぎしていたことが印象的であった。
そのやり取りの一部はこうである。
ワタナベくん「K先生は自分では買われているんですか?」
先生「僕はね、それはね、秘密なんです。永遠の秘密なんです」
ワタナベくん「ここだけの話、ちょっと買われてます?」
先生「いやー、や、や、や・・・・」(苦笑
ワタナベくん「だって買ってなかったらここまで、こう・・・」(CM入り
まぁ所詮、評論の先生ということなのである。
評論家を目指したい人であれば、幅広く勉強することも意義がある。
しかし、売買で利益を上げたいと思う実践家を目指すなら、学ぶべきことは別にある。
相場では企業の業績が良くても下げる時もあるし、業績が悪くても上げる時もある。最近のディーエヌエーは業績が良くても下げる典型であろう。
また、NY市場の動きに反応して上げ下げする時もあるし、NYが上げ下げしても反応しない時もある。
為替に反応する時もあれば、為替がらみの思惑とは逆に動く時もある。
結局のところ、何でも起こるのであって、そこに秘密を探ろうとしても無駄なのである。
しかし、実践家としてのぞむのであれば別である。実践家には実践家の歩む道がある。
彦摩呂氏のようなグルメリポーターでは表現力が大事である。
しかし、料理人は表現力よりも包丁のとぎ方、魚のさばき方や料理の下ごしらえができるかどうかが大事になってくる。
評論家と実践家では目指す道が違うということである。
では、投資における実践家が学ぶべき最高の教材は何かというと、自分が過去取り引きした売買そのものである。

  • なぜ、自分はそこで仕掛けたのか?
  • なぜ、そこで手仕舞いしたのか?
  • その時の感情は?
  • 含み損を抱えたとき何を考えどうしたかったか?
  • 利益が乗ったとき、何を考えどう感じたか?
  • もっと利益を出すためには、どうすればよかったのか?
  • 損失を小さく抑えるには、どこに注目すればよかったのか?

自分のとった行動を振り返ることが一番の教材になる。

  • 自分は、こういう時に感情に左右される
  • 自分は、こういうミスを犯しやすいから注意しよう
  • ポジションサイズが小さくすればミスも防げる

などと必ずヒントが見つかるのである。
この作業はいっぺんには進まない。
人前で握れるほどの寿司職人になるには時間がかかることと同じで実践家には時間が必要なのである。
少しずつ自分の癖を発見すればいいし、少しずつ利益につながらない思考を変化させていけばいい。小さな歩みではあるが、継続すると他にはない最強の武器になる。しかも、他の誰も持たない自分オリジナルの武器が出来上がることになる。
話は少し変わって、投資とゴルフは非常に似通っていると仙台のUさんからメールを頂戴しました。
おそらく私より人生の大先輩だと思うので、
「である調」では失礼だと思うので「ですます調」に変えますが、
あの時にこうしておけばよかった、
こうしておけばよかったとわかっていてもできない・・・
だから、ゴルフゲームでは19番ホールがあり、
それを「タラレバパーティ」と言うそうです。
そして、
投資の世界にも楽しい19番Hがあるといいですね。
あまりにも辛い!辛すぎるタラレバだからこそ、
二度と犯してはいけないタラレバだから、
充分時間をかけて「投資の19番H」を
充実させなければいけないと感じています。
と、おっしゃっています。
まさにUさんがおっしゃるとおり。
自分のプレイにこそステップアップするヒントが隠れているし、
自分の過去の売買履歴の中に利益を生み出すためのヒントがある。
ゴルフでは19番ホール。
投資では検証作業。
できれば毎日、最低でも一週間に一回。
月に1度は当たり前。
この作業を行っている人と、毎回を何となく過ごしている人。
どちらが上達するか、火を見るより明らかである。
評論家と実践家では、歩むべき道が違う。
投資で勝てる人と、いつまでも負け続ける人。
これも歩んでいる道が違う上に、何より取り組む姿勢が違う。
多くの場合、経済的にゆとりのない人、つまりストレートに表現すれば貧乏人ほど鷹揚である。
隣の芝生が青くても、気に留めなければ無駄なお金も時間も費やさなくて済む。
エコカー減税だ、エコポイントだと、車や家電が使えるうちにローンまで組んで買い替える必要もない。
ひと様がどうだとか、世間がどうだとか、一番大事なことは、
「自分がどうありたいのか?」
なのである。
ゴルフも投資も大雑把な人には大雑把な成績しかついてこない。
以前のメルマガでは次のようなことを書いた。
—————以下—————
プロのハンターは、無駄にエネルギーを使わない。
参加する狩りにおいて、どのくらいの確率で獲物を
捕らえられるかを知っています。
獲物がいなければ、どこに行けば獲物がいるのか知っている。
獲物を見つけても、狩れると思うまでは動かない。
ハンティングを仕掛けても、失敗することも
あることを知っている。
つまり、賢い狩りをし、単なるお楽しみなのではなく、
狩るべくして狩っている状態を作っているということです。
アマチュア投資家は、これが儲かりそうだと聞けば、
なんでもかんでも仕掛けてしまう。
利食えても、早すぎるので儲けは少ない。
含み損が膨らんだら、損失を受け入れようとしない。
すべての手合いで勝利をおさめられると勘違いをする。
投資にしても、ハンティングにしても始める前に
勝負は決まっているということです。
—————以上—————
「自分がどうありたいのか?」
を真剣に考えれば実践家として取り組む姿勢が違ってくる。
私もこれを書いている意味として、自分に打ち勝つ、つまり克己心の意味のほうがはるかに強い。
私にはこれが、19番ホールということかもしれない。(笑